退職を考えている方の中には、自分一人では会社と上手く交渉できないと不安に感じる人も多いでしょう。そんな時に頼りになるのが退職代行サービスです。専門の業者に依頼すれば、的確な法的アドバイスを受けられるだけでなく、会社との交渉も任せられます。
しかし、実際にサービスを利用する際の具体的な流れや注意点は分かりづらい面もあります。本記事では、退職代行の手順から事前準備、メリット・デメリット、成功事例に至るまで、わかりやすく解説していきます。
退職代行サービスを利用する前の準備
①退職理由を明確にする
会社を退職する理由を明確にすることは、退職代行サービスを上手に利用するための重要なステップです。退職理由によって、代行業者への依頼内容や、対応の仕方が変わってくるからです。
たとえば、単に転職活動を行うための退職なのか、パワーハラスメントや長時間労働などの理不尽な待遇を理由とする退職なのかによって、そのあと業者にお願いする内容が違ってきます。パワハラがあった場合は、それを裏付ける証拠の収集や、慰謝料請求のための根拠作りが必要になる可能性がありますから。
ある上場企業の従業員が、極度の長時間労働と上司からの暴行を受けて退職を決意したケースでは、退職代行業者に暴行の証拠となる医師の診断書や、残業時間がわかるタイムカードのコピーを提出しました。
そうすることで、業者が会社に対して厳しい交渉姿勢で臨むことができ、最終的に数百万円の和解金を勝ち取ることができたのです。退職理由をはっきりさせておくことが、スムーズな手続きにつながるのが分かりますね。
②退職代行業者の選び方
退職代行業者を選ぶ際は、実績や料金体系、対応力などを総合的に見極める必要があります。まずは口コミサイトなどで評判を確認し、さらに実際に問い合わせて対応を判断するのが賢明です。
ある若手弁護士が起こした退職代行サービス「リーガル・リンクス」のケースでは、親切丁寧な対応と低コスト、確かな実績が高く評価されています。顧客からは「合理的な料金設定で、弁護士が直接対応してくれてわかりやすかった」といった声が出ていました。
一方、知名度のある大手代行業者の中には、「料金が高額過ぎる」「弁護士の対応が雑だった」といった批判の声もあります。お金持ちには良質なサービスを提供するが、一般的な労働者に冷たい、といった実態もうかがえます。退職理由に合わせた適切な業者を選ぶことが大切だということですね。
退職代行を利用する際の具体的な手順
①退職代行依頼の流れ
退職代行サービスを実際に利用する際の具体的な流れを説明します。まず自分で会社に退職届を提出するのではなく、代行業者に依頼をしてその業者から会社に退職申し出をすることになります。
はじめに代行業者に無料の問い合わせや相談をして、自分のケースに対してアドバイスをもらいます。そこで契約の可否を判断し、契約することに決めれば、退職の経緯や会社の状況、求める条件などの情報を代行業者に詳しく伝えます。
あるITベンチャー企業の元社員は、代行業者に「半年で3人の部下がブラックな環境に耐えられず退職した」「取引先からクレームが相次いだ」などと状況を説明し、2カ月分の残り給与の支払いと、就職が決まるまでの失業給付の要求を依頼しました。こうして代行業者は事情を把握し、適切な交渉方針を立てるのです。
②必要書類の準備
退職代行に際しては、自身の立場を裏付けるための書類の準備が重要になります。具体的には、労働条件通知書や賃金台帳のコピー、労働時間の実績がわかるタイムカード、上司からのメールなどの記録を用意します。パワハラの証拠となる医師の診断書や職場の同僚への事情聴取の記録なども、交渉の重要な資料となり得るでしょう。
ある小売業の元社員は、長時間残業の実態を示すタイムカード、メンタル不調の診断書、店長からの暴言を録音したICレコーダーの音声を業者に提出しました。こうした準備を万全にしておくことで、代行業者は実態を正確に把握でき、具体的な交渉材料を持って会社側と渡り合えるのです。
③代行費用の確認と支払い方法
退職代行の料金プランには「成果報酬型」と「月額固定制」などのパターンがあり、各業者でさまざまです。一般的な成果報酬型だと、和解金の20%前後が手数料となることが多いようです。固定月額制の場合は、3万円台の比較的リーズナブルな料金設定の業者も存在しています。
前述の「リーガル・リンクス」のように、弁護士が直接対応する場合は、知名度の割に手数料が抑えられているのが特徴です。支払い方法も、代行業者によってクレジットカード払い・銀行振込・コンビニ払いなど違いがあるので、事前によく確認しましょう。総合的に自分のケースに合った業者を選ぶことが大切ですね。
退職代行後の対応と注意点
①退職後の手続き
退職後すぐに必要になる手続きがいくつかあります。まずは住民票の転出や国民健康保険への加入、雇用保険の手続き、確定申告の準備などが挙げられます。転職活動を行う場合は、ハローワークでの求職申し込みなども欠かせません。会社からお世話になっていた福利厚生制度なども退職とともに無くなってしまうので、その点も確認が必要です。
ある金融機関の元社員は退職後、賃貸アパートから転居する際に大家から訴えられそうになったことがありました。会社を退職すると、身分証の提出や賃貸契約者の収入が問題化する可能性があるのです。そうした事態を避けるためにも、退職後の対応には気をつけなければなりません。
②退職代行後のトラブル対処法
退職代行サービスを経て無事退職が成立しても、それで終わりではありません。中には納得がいかずに、退職者に対して嫌がらせや誹謗中傷をしかける会社側もあるかもしれません。そうしたトラブルに備えて、事前にどう対処すべきかを退職代行業者に相談しておくことが賢明でしょう。
たとえば、ある病院の看護師は、退職交渉の際に人事部長から「二度と就職できるわけがない」と言われ、後に採用面接で悪口を言われたそうです。このケースでは代行業者に事情を報告し、病院側に対して名誉毀損で示談金の支払いを求める対応をとりました。精神的なダメージに対する慰謝料も加えて請求し、最終的に50万円の支払いを勝ち取ったのです。
退職後に何かトラブルがあれば、たとえ退職自体は済んでいても、すぐに代行業者に連絡することが重要です。代行業者は法的な見地からアドバイスをしてくれますし、場合によっては示談交渉に乗り出してくれる存在なのです。
退職代行を利用する際のメリット・デメリット
①退職代行のメリット
退職代行サービスを利用することの最大のメリットは、専門家に頼れるという点にあります。一般の従業員が自身で退職交渉を行うのは難しい面もありますが、退職代行業者なら労働問題に精通した専門家が、的確な対応を取ってくれるのです。
ある中小企業の社員は、長年勤めた会社がブラック体質になったため退職を決意しましたが、自分一人では言うことを聞いてもらえず困っていました。そこで退職代行業者に依頼したところ、会社の体たらくをしっかり説明し、未払い残業代の請求など、適切な条件を勝ち取ってくれたそうです。
また、面倒な手続きを代行してもらえるのも大きなメリットです。退職届の提出から、退職後の確定申告など、一つ一つは大したことではありませんが、発生する事務作業は多岐にわたります。そうした一連の手続きを任せられるのは、従業員にとってはとても助かるはずです。
②退職代行のデメリット
一方で、退職代行を利用する際の主なデメリットとしては、手数料がかさむことが挙げられるでしょう。特に成功報酬型の場合、高額の和解金が発生すれば、その一定割合が手数料として課されることになります。
さらに心理的な面で言えば、自分で会社と直接交渉する機会を逸してしまう点がデメリットと言えます。会社と従業員の関係を自ら正すチャンスを逃してしまうわけですから、状況によってはそちらを選択したい人もいるかもしれません。
最後に、安心感を得るためにも信頼できる業者を選ぶ必要があり、それなりの手間がかかることも、デメリットの一つと言えるかもしれません。優良な業者は限られており、本当によく吟味する必要があります。業者選びを誤れば、かえって損をする可能性もあるのです。
退職代行を上手く活用するためのポイント
①適切な退職代行業者の選び方
多くの退職代行業者が存在する中で、自分のニーズに合った業者を選ぶ必要があります。選定のポイントは大きく分けて、業者の「実績」「料金」「対応」の3点です。
まず「実績」については、過去に成功した退職交渉の事例数や、平均して得られた条件水準を確認しましょう。高額な和解金を獲得できたケースがあったり、上場大手企業との交渉実績があると、信頼がおけます。
次に「料金」は、自分の予算内に収まる適切な水準かを吟味する必要があります。退職代行業界では、従来の成功報酬型に加え、定額制のサービスも増えてきています。料金体系が複雑なところも多いので、しっかり確認しましょう。
最後に「対応」も重要なポイントです。実際に問い合わせをしてみて、スタッフの応対や説明は分かりやすいか、疑問に丁寧に答えてくれるかなどを確かめましょう。
ある会社員は「大手だけど電話対応が雑で、じっくり聞いてもらえなかった」と不満を漏らしていました。一方で「個人経営の小さな事務所だったが、丁寧に事情を聞いてくれた」と好評価の声もあります。自分が求める水準の対応が得られるかどうかは、最初の接点である程度判断がつくはずです。
②退職交渉のコツ
業者選定が済めば、次は退職交渉そのものに入ります。この交渉では、自身の主張を明確に伝え、会社側の要求にも一定の違和感を持つことがコツです。
例えば、あるIT企業の社員は「精神的ストレスでメンタルクリニックにかかっている」と主張し、その裏付けとなる医師の診断書や心療内科の領収書なども提示しました。そうすることで、会社側に払わされた金額は従業員のメンタルヘルスケアにも使われるべきだと主張できたのです。
また、会社から提示された退職条件に対して、「もっと適切な水準ではないか」と、違和感を持つこともポイントです。ある製造業の社員は、『退職して工場を辞めさせられるだけで、何の補償もなし』と提示されたそうですが、『工場の人手不足で、長年の勤続が無に帰するのはおかしい』と異議を唱えました。こうした姿勢が、最終的に数百万円の和解金につながったそうです。
③スムーズな退職のための準備
退職代行を利用する前の準備として、自身の労働実態を裏付ける資料を用意しておくことが大切です。具体的には労働条件通知書のコピーや、タイムカードで分かる残業時間の記録、上司からの暴言をICレコーダーに録音したデータなどです。
ある工場従業員は、半年分のタイムカードと、工場長から毎晩メールで送られてくる作業指示の記録を用意していました。これらの資料を提示したことで、日曜日に工場で働かされていた実態や、労基法違反の長時間残業を指摘でき、有利な立場で交渉できたそうです。
さらに、職場の同僚らにも事情を聞いておき、証言を録音しておくなどの対策も有効でしょう。ある営業職の従業員は、同僚3人に事情を聴取し、「上司から毎日暴言を浴びせられていた」ことを証言してもらっていました。このように、資料を多く用意できれば、それだけ交渉では説得力が増すはずです。
退職代行の実際の活用事例
①上場企業から円滑に退職したケース
ここで、実際の退職代行の成功事例を紹介します。
Aさんは大手上場企業に勤めていましたが、パワハラや長時間労働に耐えられず、退職を決意しました。弁護士が運営する退職代行サービス「リーガル・リンクス」を利用し、会社との交渉に入りました。
Aさんは診断書とタイムカードのコピーを提示し、パワハラや長時間残業の実態を示しました。さらに、同僚への事情聴取録音記録なども提出しました。
リーガル・リンクスの弁護士は、会社には「企業の信用を傷つける事実が発覚した」と強く指摘したそうです。結果として、会社側は和解金800万円の支払いに応じたというから、手厚い条件を勝ち取れたと言えますね。
②ブラック企業から退職できたケース
Bさんは中小のブラック企業に務めていましたが、有給も付与されず、罵声を浴びせられるなど劣悪な環境でした。退職を決意し、代行サービス「退職NAVI」に依頼しました。
BさんからNAVIに提示された資料は、上司のLINEでの暴言のスクリーンショット、給与明細上での有給付与の欠如などがありました。NAVIは会社側と数回交渉を重ね、未払い残業代150万円と、慰謝料80万円の支払いを要求。粘り強く主張した結果、合計230万円の支払いで和解が成立したそうです。
このように、しっかりと証拠を収集し、専門家に主張を代行してもらえば、労働問題に対処できる可能性が高まります。
退職代行を利用する際の法的留意点
①労働基準法上の注意点
退職代行を利用する際は、労働基準法に抵触しないよう気をつける必要があります。具体的には、以下の点に注意しましょう。
- 退職理由が正当なものであること
単なる希望退職ではなく、会社都合や労働環境の問題があることが前提となります。パワハラや長時間労働、給与未払いなどが想定されます。 - 支払い額が適正なものであること
退職代行の結果、会社から受け取る金額は、未払い残業代や退職金などの適正水準である必要があります。高額すぎる慰謝料などは問題視される可能性が高くなります。 - 証拠資料の準備が十分であること
代行業者を通じて要求する内容は、確かな裏付け資料が必要不可欠です。タイムカードや上司のメールなどを収集しておくことが重要です。
一例として、ある製造業の社員は長期間の深夜残業の実態を示す資料を準備し、未払い残業代の支払いを求めました。代行業者を通じて適切に要求を行ったことで、労基法に沿った解決が図れたそうです。
②退職代行契約の内容確認
退職代行サービスを利用する際は、代行業者と結ぶ契約内容をしっかりと確認する必要があります。特に以下の点に気をつける必要があります。
- 報酬額やタイミング
成功報酬型かフラット料金型かなど報酬体系を確認し、金額も適正水準かチェックが必要です。また、いつ支払うのかも決めておきましょう。 - 守秘義務の内容と範囲
プライバシーの保護される範囲を確かめ、漏洩リスクがないか吟味します。 - 再交渉の可否や追加料金の有無
ひとりでは会社の提示条件をなかなか覆せない可能性もあり、改めて代行を依頼する場合の条件を確認しましょう。 - 上限金額の設定有無
高額な解決金になった際の上限設定の有無なども押さえておく必要があります。
この点について、ある事務職員は「最初から料金の詳細を明確に説明してくれず、追加で請求されてしまった」と不満を漏らしていました。確実にトラブル防止のためにも、契約内容は入念にチェックすべきなのです。
まとめ
退職代行を上手に利用するためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 退職理由をはっきりさせ、証拠となる資料を準備する
- 料金体系や実績、対応力などを総合的に見て適切な業者を選ぶ
- 資料を提示し、会社側の要求に違和感を持ちながら交渉する
- 労働基準法を意識し、適正な金額の設定と契約内容の確認を行う
退職は人生の重要な転機です。
自分一人で抱え込まず、専門家に任せることで、スムーズな退職が実現できるはずです。今一度状況を整理し、ぜひ退職代行サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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